最終更新 平成26年7月
過失相殺を認めない!? 恐るべき4地裁の「新基準」
いくら、「自転車は車道が原則、歩道は例外」だとしても、歩道での事故において、被害者(歩行者)にも過失があった場合、損害賠償金は過失相殺される・・・・と思いますよね?
ところが、自転車と歩行者の事故が歩道上の場合、あなたに落ち度はなく、明らかに歩行者が悪い場合であっても、裁判では、過失相殺を認めず、あなたは、満額、損害賠償金を支払わなければならなくなる恐れがあります。
そんなバカなと思われるでしょうが、本当なんです。
まず、本題に入る前に過失相殺について、おさらいしましょう。
クルマの事故の場合、被害者にも責任や過失があった場合、その程度に応じ裁判所が損害賠償額を減らします。
例を挙げると、青信号で横断中の歩行者をクルマがはねた場合、歩行者の過失割合は0、クルマの過失割合は100です。この場合、被害者(歩行者)には過失がないので、クルマ側は満額の損害賠償金を支払うことになります。
一方、歩行者が赤信号にもかかわらず横断し、クルマ(道路は青信号)にはねられた場合は、歩行者の過失割合は70、クルマの過失割合は30です。この場合、被害者(歩行者)にも過失があることから、損害賠償金は過失相殺されます。損害賠償金額が1000万円なら、クルマ側の支払額は300万円になります。
このように、クルマやオートバイの事故では、歩行者側の過失の程度により車両側の責任を軽減する「過失相殺」がなされます。その基準が東京地裁の研究会などにより示されていますが、自転車については、「基準」がありませんでした。
そんな中、平成22年3月、東京、横浜、名古屋、大阪の4地裁が法律雑誌で誌上討論し、自転車と歩行者の事故について
、「歩道上の事故は原則、歩行者に過失はない」という新基準を示しました。
具体的にいうと、横浜地裁の裁判官が、歩道上の事故については道路交通法で自転車の走行が原則禁止され、通行できる場合も歩行者の安全に注意する義務があると指摘。「事故の責任は原則、自転車運転者に負わせるべきだ」とした上で、運転者が児童や高齢者でも変わらないとし、他の3地裁も基本的に一致したというものです。「新基準」に、4地裁は「検討が必要」としているものの、あるベテラン裁判官は「各地裁は参考にしていく」と、その影響力を指摘
しています。
毎日新聞 2010年8月21日 自転車事故:歩行者との事故、過失相殺認めず 自転車側に高額賠償
これは恐ろしいことになりました。「当たり屋」さんが歓喜乱舞するような基準です。もう、「当たり屋」さんはクルマにぶつかる必要はないですね。歩道で自転車にぶつかればよいのですから。
・・・まあ、そんな皮肉はさておき、過失相殺されないということは、事故時に、高額な損害賠償金を支払うことになります。くどいようですが、自転車に乗る人は、保険に入るべきなのです。
しかし、ここまでいっても、あなたは、「そうはいっても自転車の事故は滅多におきないから、大丈夫」と思われるかもしれません。
とんでもありません。
では、次に自転車の事故件数を確認しましょう。
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」